手順書が続かないのは「書く手間」ではなく「直す手間」
研修先でマニュアルの話になると、ほぼ同じ順番で悩みが出てきます。最初は「作る時間がない」、次に「作ったけれど誰も見ていない」、最後に「書いてある手順が今の画面と違う」。実際に整備を止めているのは3番目です。
一度でも中身が古いと気づかれると、その資料は読まれなくなります。読まれない資料は直されず、直されないからさらに古くなる。この循環に入ると、作り直すほうが安いという判断になってしまいます。
裏を返せば、マニュアル整備で本当に効かせたいのは執筆の速度ではありません。変更が起きたときに、その日のうちに追随できる状態です。Claude Codeを使う価値もそこにあります。
チャットではなくClaude Codeで作る理由
マニュアル作成をチャット形式のAIに頼むと、下書きは出ます。ただし出力を毎回どこかへコピーして貼り直す必要があり、この一手間が積み重なった結果、2回目以降の更新が止まります。
- 成果物がファイルとして残る — 手順書をMarkdownファイルとして書き出し、次回は同じファイルを開いて直せる
- 材料をそのまま渡せる — 既存のPDF資料や画面のスクリーンショットを、人が要約せずにそのまま読ませられる
- コードのないフォルダでも動く — 公式ドキュメントでも、ノートやドキュメントのフォルダで動かす使い方が想定されている
エンジニアでなくても回せる工程です
この記事で扱うのは、資料を読ませて文章をファイルへ書き出す作業だけで、プログラムを書く場面は出てきません。非エンジニアが業務基盤として使い始める順序は非エンジニアの活用4ステップにまとめています。
ステップ1: 材料を1つのフォルダに集める
最初にやるのは執筆ではなく材料の集約です。作業用のフォルダを1つ作り、その業務に関わる資料を全部入れます。Claude Codeはそのフォルダを指定して起動し、@ファイル名 で個別の資料を名指しできます。
- 既存の手順書・研修資料・引き継ぎメモ(テキスト・Markdown・PDF)
- 実際の画面キャプチャ(操作の順に番号を付けたファイル名で保存しておく)
- 過去の問い合わせややり取りの抜粋(例外対応の出どころになるので効果が大きい)
WordやExcelはひと手間かかる
公式のツール解説で読み込み対象として挙げられているのは、テキスト系のファイル・画像・PDFです。PDFは短いものは全体を、長いものはページ範囲を指定して読みます。.docx や .xlsx は対応形式として挙げられていません。PDFに書き出すかテキストへ変換してからフォルダに置くのが確実です。
ステップ2: 画面キャプチャを渡して操作を言語化させる
手順書づくりでいちばん面倒なのは、画面の操作を文章に起こす部分です。ここは人が書くよりも、キャプチャを渡して書かせたほうが速く、押す順番の抜けも減ります。
画像の渡し方は3つあります。ウィンドウへのドラッグ&ドロップ、クリップボードからの貼り付け、ファイルパスの指定です。貼り付けは Ctrl+V で、WindowsとWSLでは Alt+V も使えます。デスクトップアプリでは入力欄の添付ボタンからも渡せます。
貼り付けると入力欄に [Image #1] のような目印が入り、文中で「1枚目の画面では」と位置を指して指示できます。複数枚をまとめて渡し、操作の順に説明させるのがこの工程のコツです。
添付した5枚は、経費精算を申請するときの画面を操作順に撮ったものです。
各画面について「どこをクリックするか」「何を入力するか」「次に何が起きるか」を
1文ずつ書き出してください。
画面に写っていない前提や条件は推測せず、「要確認」と書いてください。最後の1行が効きます。推測で埋めさせないことを先に約束させておくと、あとで事実確認すべき箇所が最初から印になって出てきます。
ステップ3: 章立てを先に確定してから本文を書かせる
いきなり全文を書かせると、粒度がばらついた長い文章が出てきます。先に章立てだけを出させ、そこで直すほうが手戻りは小さくなります。目次の段階なら、順序の入れ替えも一言で済みます。
プランモードを使うと、Claudeは資料を読んだうえで計画を提示するだけで、ファイルへの書き込みは行いません。Shift+Tab でモードを切り替え、構成に納得してから承認する進め方です。
章立てが決まったら、1章ずつ書かせて1章ずつ確認します。全文を一度に出させないほうが、粒度も語尾も表記も揃いやすくなります。
ステップ4: 「そのとおりに操作できるか」で検証する
ここを飛ばすと、手順書はそれらしいのに通らない文章になります。出来上がった手順を、その業務を知らない人が読みながら実際に操作してみるのが最短の検証です。
詰まった箇所は、人が直接文章を直すよりも詰まった事実をそのままClaudeへ戻すほうが早く済みます。「ステップ4で、画面に該当のボタンが見当たらなかった」と伝えれば、前後の整合まで含めて直ります。
検証の前に、推測で書かれた箇所を洗い出す
実際に操作する前に「この手順書のうち、渡した資料や画像からは確認できない記述を一覧にしてください」と聞いてください。根拠のない箇所だけが先に集まるので、誰に何を確認すればよいかの段取りが立てやすくなります。
2本目以降のために、書式をSkillへ固定する
1本目が仕上がったら、同じ品質で2本目を作れる状態にします。ここで効くのがSkillです。手順書の章立て・語尾・禁止事項をSKILL.mdに書いておけば、次からは「この業務の手順書を作って」だけで同じ型が出ます。
置き場所は2つです。自分だけで使うなら ~/.claude/skills/<名前>/SKILL.md、チームで共有するならプロジェクト配下の .claude/skills/<名前>/SKILL.md に置いてコミットします。取得した全員に同じ型が届きます。
Skillは説明文をもとに必要な場面で自動的に読み込まれ、/スキル名 と打って手動で呼ぶこともできます。書き方はSkillsの作り方に、CLAUDE.mdやメモリとの使い分けはナレッジ管理にまとめています。
つまずきやすい3点と対処
表は横にスクロールできます →
| 症状 | 起きている原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 手順が実際の画面と食い違う | 資料になかった部分を推測で埋めている | 「確認できない記述を一覧に」と先に聞き、根拠のない箇所を潰す |
| 章によって細かさがばらつく | 全文を一度に書かせている | 章立てを先に確定し、1章ずつ書かせて確認する |
| 更新のたびに文体が変わる | 書式が担当者の記憶にしかない | 章立て・語尾・禁止事項をSkillへ固定する |
3つとも、原因は作業の順番と置き場所にあります。文章力の問題として扱うと、書き手が代わるたびに同じ揺り戻しが起きます。
研修・導入支援では、1本目を一緒に作ります
マニュアル整備が進まない理由は、ツールの使い方よりもどの業務から手を付けるかが決まらないことにあります。全部をまとめて整えようとすると、たいてい途中で止まります。
AI OrchestraのClaude Code研修・導入支援では、対象業務の選び方から材料の集め方、書式のSkill化とチームへの配布まで伴走しています。手順が個人の記憶のままになっているという企業様は、お気軽にご相談ください。
Claude Codeを組織に定着させたい企業様へ。AI Orchestraの法人研修・導入支援をご覧ください。




