AGENTS.mdとは — Codexが毎回読む「ルールブック」

AGENTS.mdは、作業フォルダ(プロジェクト)に置くテキストファイルです。ここに書いた内容を、Codexはそのフォルダで仕事をするたびに必ず読み込み、ルールとして守ろうとします。「毎回の依頼文で説明していたこと」がファイル側に移るため、依頼はどんどん短く、成果物のブレはどんどん小さくなります。

当社はこれを「新人が古参社員に変わり始める分岐点」と呼んでいます。何も知らない新人(初期状態のCodex)に毎回口頭で指示するのをやめ、就業規則とマニュアルを渡す——AGENTS.mdを置くことは、それと同じ意味を持ちます。

Claude Codeをご存じの方へ

AGENTS.mdは、Claude CodeにおけるCLAUDE.mdに相当する仕組みです。ルールファイルに何を書くべきかという考え方は両者でほぼ共通なので、CLAUDE.mdの書き方で解説している設計論もそのまま応用できます。

置き場所 — 作業フォルダの直下に1枚から

基本は、Codexにプロジェクトとして選択している作業フォルダの直下に、AGENTS.md という名前で1枚置くだけです。ただし置ける場所は1か所ではありません。実際には「自分の共通ルール」「プロジェクト全体」「フォルダごと」の3階層に置けます。

AGENTS.mdを置ける3つの階層
~/.codex/
└── AGENTS.md                ← 自分の共通ルール

my-project/
├── AGENTS.md                ← このプロジェクト全体
│
├── sales/
│   └── AGENTS.md            ← 営業資料固有
│
└── marketing/
    └── AGENTS.md            ← マーケ固有

作業フォルダの外にも、もう1枚ある

いちばん上の グローバルのAGENTS.md(~/.codex/AGENTS.md)は、どのプロジェクトでも共通して読まれます。そしてChatGPTデスクトップアプリの「設定 > パーソナライズ > カスタム指示」欄は、このグローバルの1枚を編集する画面そのものです。詳しくはカスタム指示とグローバルAGENTS.mdの関係で解説しています。

読み込み順 — 下の階層ほど優先される

Codexはセッション開始時に、該当するAGENTS.mdを上の階層から順に1本へ連結して読み込みます。たとえば marketing/ でCodexを起動すれば、次の順番です。

marketing/ で起動したときの読み込み順
グローバル AGENTS.md
↓
プロジェクト AGENTS.md
↓
marketing/AGENTS.md

下位の指示ほど後に入るため、競合する指示は下位側が優先されます。書き分けのコツは、共通の仕事のやり方はグローバルに、プロジェクト全体の前提はプロジェクト直下に、その領域だけの事情は各フォルダに——という切り分けです。

何を書くか — 最初は3項目で十分

最初から立派なルールブックを作る必要はありません。当社が研修でおすすめしている初期構成は、次の3項目だけです。

  1. 1会社・仕事の前提 — 何をしている会社/チームか、誰に向けた成果物か
  2. 2成果物のトーンと形式 — 文体(です・ます調など)、分量の目安、ファイル名や保存場所のルール
  3. 3やってはいけないこと — 使ってはいけない表現、触ってはいけないファイル、確認なしで送信・公開しない、など

書き方のイメージとして、非エンジニアの業務フォルダに置く最小構成の例を挙げます。

最小構成のAGENTS.md例(業務フォルダ向け)
# AGENTS.md

## この作業フォルダについて
- 株式会社◯◯の営業企画チームの作業フォルダ
- 成果物の読み手は社内の経営会議メンバー

## 成果物のルール
- 文体は「です・ます調」、A4で1〜2枚に収める
- 数字は必ず元資料の値を使い、推測で補完しない
- ファイル名は「YYMMDD_内容.md」の形式で保存する

## やってはいけないこと
- 顧客名を成果物に書かない(社名はイニシャル表記)
- 完成前のファイルをフォルダ外にコピーしない

重要なのは、これが依頼文から「毎回同じ説明」を消すためのファイルだという目的意識です。1回しか使わない指示は依頼文に、毎回守らせたいことだけをAGENTS.mdに——この線引きさえ守れば、書く内容は自然に決まっていきます。

次の一歩 — 文系タスクなら、この4項目まで

公式ドキュメントでは、AGENTS.mdに書くとよい内容として6つの項目が挙げられています。ただし半分はプログラミングを前提とした項目です。資料作成や調査といった文系タスクでは、次の4つを書いておけば十分です。上の3項目で運用を始めたら、この4つに揃えていくイメージで育ててください。

表は横にスクロールできます →

項目説明
フォルダ構成と、どこに何を置くかプロジェクトの中身がどう分かれていて、作ったものをどこに保存するのか「新しい資料は 03_資料 に入れる」「完成版は 出力 フォルダへ」
決まりごと(表記ルール・進め方)社名や商品名の表記、文体、ファイル名の付け方、報告の仕方「日付は 2026-04-25 形式で書く」「ファイル名は YYMMDD_タイトル」
制約と禁止事項やってはいけないこと「顧客名は書かない」「既存のファイルを消さない」「数字は推測で書かず、元データを確認する」
完了の定義と、確かめ方どうなったら終わりか、どうやって確かめるか「元データと数字が一致していること」「誤字脱字を確認してから報告する」

4つ目の「完了の定義と、確かめ方」は、抜けやすいわりに効き目が大きい項目です。ここが書いてあるかどうかで、成果物が「それらしいもの」で止まるか、検算まで済んだ状態で返ってくるかが変わります。

育て方 — 「同じ指摘を2回したら1行追記」

AGENTS.mdは最初に完成させるものではなく、運用しながら育てるものです。当社のルールはシンプルで、「Codexの成果物に同じ指摘を2回したら、その場でAGENTS.mdに1行追記する」。これだけです。

たとえば「また文末が体言止めになっている」と2回直させたら、「文末は体言止めにしない」と1行足す。この積み重ねが数週間で効いてきて、レビューでの指摘がみるみる減っていきます。ルールファイルの価値は初期の完成度ではなく、運用の中で実際の失敗から学ばせた蓄積で決まります。

前提として知っておきたいのは、Codexが自分から気を利かせてAGENTS.mdを書き足すことはないという点です。書かれるのは、こちらが依頼したときだけ。だからこそ「2回目の指摘」を合図に、その場で頼んでしまうのが確実です。

その場で書き足してもらう頼み方
今のルールは、今後もずっと守ってほしいので AGENTS.md に書き足してください。

このプロジェクトだけの話なのか、どの作業でも共通の話なのかを判断して、
どこに書き足すか(グローバル / プロジェクト / フォルダ)を先に教えてください。

書き足す場所は、Codexに任せきりにしない

上のように「どこに書き足すか」を先に言わせるのがポイントです。グローバルに入れるべきでないルールが混ざると、まったく関係のない別のプロジェクトにまで効いてしまいます。当社でも、特定案件の言い回しのルールがグローバル側に入り込み、別案件の成果物のトーンが変わってしまったことがありました。提案された置き場所を1秒確認するだけで防げます。

肥大化させない — 精度と料金の両方に効く

育てる一方で、増やしすぎには注意が必要です。AGENTS.mdはCodexが毎回読み込むため、長くなるほど毎回の利用枠の消費が増え(公式ドキュメントも節約術として「AGENTS.mdを小さく保つ・ネストで分割する」ことを挙げています)、また指示が多すぎると重要なルールが埋もれて守られにくくなります。

上限は32KiB — 超えても警告は出ない

感覚論ではなく、明確な上限があります。3階層を連結した合計には project_doc_max_bytes という上限があり、既定は 32KiB(32,768バイト)です。厄介なのは、上限に達するとそれ以降のファイルは読み込まれないのに、警告もエラーも出ないことです。「書いたのに守られない」の原因がここにあるケースは珍しくありません。

バイト数と言われてもピンとこないので、目安に直します。日本語は1文字3バイトなので、すべて日本語なら合計でおよそ1万文字。1行30〜40文字として、250〜350行あたりが天井です。

安全圏の目安

AGENTS.md 1ファイルにつき100行以内、3階層合わせて200行以内。これを超えそうになったら、書きすぎのサインだと思ってください。長く書けば効くというものではないので、各階層とも必要なことだけを簡潔に書きます。天井(250〜350行)ではなく、その手前の200行を運用ラインに置くのがおすすめです。

  • 定期的に棚卸しする — もう起きていない失敗のルールは削る・統合する
  • 詳細はネストに逃がす — 特定業務だけのルールはサブフォルダのAGENTS.mdへ
  • 「ルール」と「手順」を分ける — 毎回守る原則はAGENTS.md、特定業務の手順はSkillsに登録する(役割分担はCodexの応用機能まとめを参照)

組織で書く場合 — AGENTS.mdは「合意形成の成果物」

個人の作業フォルダなら自分の好みで書けばよい一方、チームの共有フォルダに置くAGENTS.mdは「会社として成果物に何を求めるか」の合意そのものです。トーン・禁止事項・確認フローを言語化する過程は、実はAI導入以前に曖昧だった業務基準を明文化する機会でもあります。当社のCodex研修・導入伴走支援では、貴社の実業務を題材にAGENTS.mdの初版を一緒に作り、育てる運用ルールまで含めて伴走しています。

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