本記事の情報の鮮度について

本記事は2026年8月時点の公式ドキュメント(learn.chatgpt.com)と、当社の実運用にもとづく整理です。フォルダ名や上限値は変わる可能性があるため、最新は公式ドキュメントでご確認ください。「一度成功した手順を、次から再現できる形に変える」という考え方自体は仕様が変わっても変わりません。

Agent Skillsとは — 再利用できる仕事の手順書

Agent Skills とは、Codexが特定の仕事をするときに使う再利用可能なワークフローです。手順そのものだけでなく、必要に応じてスクリプトや参照資料もパッケージに含められます。

なぜCodexのスキルが .codex ではなく .agents というフォルダに置かれるのか、という設計の背景についてはCodexのSkillsはなぜ.agents配下にあるのかで解説しています。本記事は、その置き場所を前提に「では実際にどう作るか」に絞ります。

フォルダ構成 — 必須はSKILL.md 1枚だけ

スキルの実体は1つのフォルダです。中に SKILL.md というファイルを置けば、それがスキルになります。SKILL.md 以外はすべて任意なので、まずは1枚から始めて構いません

スキルのフォルダ構成(SKILL.md以外は任意)
my-skill/
├── SKILL.md          ← 必須:手順とメタデータ(name・description)
├── scripts/          ← 任意:実行できるコード
├── references/       ← 任意:参照用の資料
├── assets/           ← 任意:テンプレート・素材
└── agents/
    └── openai.yaml   ← 任意:見た目の設定と依存関係

scripts references assets agents決められた名前です。自分で好きな名前を付けるのではなく、この名前のフォルダに入れます。いちばん下の agents/openai.yaml は表示設定や依存関係を指定する上級者向けのファイルで、通常は用意しなくても動きます。

SKILL.mdの書き方 — nameとdescription、その下に手順

SKILL.md は、いちばん上に name(スキルの名前)と description(どんなときに使うか)を書き、その下に手順を書くだけです。

SKILL.mdの例
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name: 請求書作成
description: マネーフォワードで請求書の下書きを作るとき。「請求書作って」「インボイス発行して」などの依頼で使う。
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# 請求書を作る手順

1. references/請求ルール.md で締め日と消費税の扱いを確認する
2. scripts/集計.py を実行して、稼働時間シートから請求金額を出す
3. assets/請求書雛形.xlsx に 2 の金額を転記する
4. 金額と宛名を読み上げ、送信前に必ず確認を取る

「毎月、稼働時間のシートを見て請求書を作る」という仕事をスキルにすると、フォルダ全体は次のようになります。

請求書作成スキルの例
請求書作成/
├── SKILL.md              ← 請求書を作る手順。「請求書作って」で使うと書いておく
├── scripts/
│   └── 集計.py           ← 稼働時間シートから請求金額を計算する
├── references/
│   └── 請求ルール.md     ← 締め日・振込期限・消費税の扱いなど、毎回参照するルール
└── assets/
    └── 請求書雛形.xlsx   ← 実際に書き込むテンプレート

どこに何を置くかは、次の基準で分けます。

  • SKILL.md — やることの手順そのものと、どんな依頼のときに使うか
  • scripts/ — 毎回まったく同じ計算や変換など、コードに任せたほうが速くて正確な処理
  • references/ — 判断のもとになるルールや資料。ここに置いておけば、毎回同じ説明を書かずに済む
  • assets/ — 書き込む土台になるテンプレートや素材

迷ったら、まず手順を SKILL.md に書くだけで十分です。「同じ説明を何度も書いている」と気づいたら references/ へ、「同じ手作業を毎回繰り返している」と気づいたら scripts/ へ切り出す。この順番で育てていくのがおすすめです。

段階的開示 — 何十個入れても邪魔にならない理由と、その限界

Codexは、最初はすべてのスキルの名前と説明文だけを読み、「これを使う」と決めた1つだけ SKILL.md の全文を読み込みます。この仕組みを段階的開示といい、スキルを何十個入れても本来の作業を邪魔しないのはこのためです。

ただし、この最初に読む一覧は毎回コンテキストに読み込まれ、上限があります。上限はコンテキストウィンドウの2%(分からない場合は8,000文字)です。スキルが多すぎると説明文が短縮され、さらに増えると一覧から省かれて警告が出ます

非エンジニアの方はここだけ注意 — 2点

(1)いちばん大事なのはdescription。使うかどうかは名前と説明文だけで決まります。手順を丁寧に書いても、説明文が曖昧だと呼び出されません。(2)使わないスキルは外す。一覧は入れた分だけコンテキストを消費し、増えすぎると一覧から省かれて呼び出されなくなります。「作ったのに使ってくれない」ときは、まずこの2つを疑ってください。

作り方の核心 — いきなり作り込まず、1回やり切ってから

ここが本記事でいちばんお伝えしたいところです。いきなりスキルを作り込もうとするのは間違いです。

まだ一度も成功していない手順を先に文章化しても、実際に動かすと抜けや思い違いが出てきます。机上で書いたスキルは、たいてい作り直しになります

順番は逆です。まずCodexと対話しながら、その仕事を1回いっしょにやり切る。うまくいったら、そのやり方をそのままスキルにしてもらいます。頼み方はこれだけです。

スキル化の頼み方
今やった手順をスキル化して

これがいちばん確実です。実際に動いた手順がそのまま元になるので、「書いてみたけれど、やってみたら足りなかった」が起きません。うまくいった1回を、次からは何度でも再現できる形に変えるだけです。

できたスキルはCodexが自動で見つけます。反映されないときはCodexを再起動してください。

使われ方 — 自分で指定する / Codexが自分で選ぶ

使われ方は2通りあります。

  • 自分から指定する — ChatGPTでは アットマーク、Codexでは ドル記号 に続けてスキル名を書きます(Codexは /skills で一覧も見られます)
  • Codexが自分で選ぶ — 「今月の請求書を作っておいて」と普通に頼むだけで、description に合うスキルがあれば自動で使われます

普段の運用では後者が中心になるため、スキル名を覚えておく必要はありません。だからこそ description が効いてくる、という話につながります。

置き場所 — 自分専用・プロジェクト共通・フォルダ用の3か所

スキルは .agents/skills というフォルダの中に、スキル1つ=1フォルダで置きます。どこに置くかで「誰が使えるか」が変わります。

置き場所と、使える範囲
~/.agents/skills/              ← 自分専用:どのプロジェクトでも使える
└── 議事録作成/

my-project/
├── .agents/skills/            ← プロジェクト共通:この案件に関わる全員が使える
│   └── 請求書作成/
│
└── 営業/
    └── .agents/skills/        ← このフォルダ用:営業の作業だけで使える
        └── 提案書作成/

Codexは、起動したフォルダから上へたどりながら .agents/skills を探し、見つかったスキルを全部集めて1つの一覧にします。

AGENTS.mdとは仕組みが違います

AGENTS.mdは下の階層が上の階層を上書きしましたが、スキルは上書きも統合もされません。同じ名前のスキルが2か所にあると、両方がそのまま一覧に並びます。どちらが動いたのか分からなくなるので、名前が重ならないように付けてください。また、探すのは起動したフォルダから上だけです。別の枝のフォルダに置いたスキルは見つかりません。「置いたのに出てこない」ときは、どのフォルダでCodexを起動したかを確認してください。

スキルのベストプラクティス4点

表は横にスクロールできます →

原則どうすること
1つのスキルに1つの仕事だけ欲張って詰め込まない。仕事が2つあるなら、スキルも2つに分ける✕「経理まわり全部」 ○「請求書作成」と「経費精算」を別のスキルにする
スクリプトより手順を優先文章の手順で足りるなら、それで済ませる。毎回まったく同じ結果が必要なときと、外部のツールを動かすときだけスクリプトにする議事録の体裁を整える → 手順だけでよい/稼働時間から請求金額を計算する → スクリプト向き
命令形で書き、渡すものと出力させるものを決める「〜する」と言い切る。何を渡して、何を出力させるのかを先に書く✕「議事録をいい感じにまとめる」 ○「議事録のメモを受け取り、決定事項・宿題・期限の3見出しで出力する」
普段の言い方で呼び出せるか試す自分がいつも使う言い方で頼んでみて、狙ったスキルが呼ばれるか確認する。呼ばれなければ description に言い方を足す「議事録まとめて」と「MTGの内容整理して」の両方で試す。後者で呼ばれないなら description に「MTGの内容整理」も書き足す

有用なスキルを作る4ステップ

ここまでの内容を、実際の進め方として4ステップにまとめます。例として「問い合わせメールへの返信下書きを作る」という仕事を、最後まで通して見ていきます。

表は横にスクロールできます →

ステップやること例:問い合わせメールへの返信下書き
① 仕事を1つに決める対象を1つに絞る。いつも何から始めるか(ファイル・リンク・メモ)と、出来上がりがどうなっていればOKかを書き出す始めるもの:届いたメール本文と料金表/出来上がり:そのまま送れる返信文(署名つき、未確定のところは空欄)
② Codexと一緒に1回やり切るスキルを書こうとしない。まずその仕事を対話しながら1回やり切る。目的・手順・出したい形式をその場で伝え、毎回必ず入れることと絶対に書かないことも指示する「金額は料金表から引く」「条件を断定しない」「日程は候補3つ」と伝えながら、返信を1通仕上げる
③ スキル化して確かめるうまくいったら「今やった手順をスキル化して」と頼む。出てきた手順を読み返し、抜けや形式のずれがあれば直す1通仕上がったのでスキル化。署名の指定が手順に入っていなかったので追加
④ 入れて使い回す有効にしてしまえば、あとは普通に頼むだけで使われる。自分で指定してもよい。設定が許せばチームにも共有できる翌週からは「この問い合わせに返信して」だけで同じ品質になる。営業チームにも共有する

組織で使うなら — 「属人化した手順」を出す装置として使う

スキルの本当の効果は、AIが速くなることではありません。担当者の頭の中にしかなかった手順が、読める形でファイルに出てくることです。これまでマニュアル化が進まなかった業務でも、「1回やり切ってスキル化して」を繰り返すだけで手順書が溜まっていきます。

だからこそ、組織で始めるときはプロジェクト側の .agents/skills に置いて共有するところまでを設計に入れてください。自分専用の場所にだけ置いていると、せっかく言語化した手順が個人の中に閉じてしまい、属人化の解消につながりません。

当社のCodex研修・導入伴走支援では、貴社の実業務を1つ選んで、その場で一緒にやり切り、そのままスキル化するところまでをワークとして行っています。持ち帰って作るのではなく、研修の中で最初の1本ができている状態を目指しています。

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