.claudeと.codexで置き場所が違う、という違和感

Claude Codeでは、プロジェクトに追加する拡張は .claude 配下に集まります。サブエージェントもスキル(Skills)も、置き場所は .claude の中。「Claude Codeに関するものは .claude を見ればいい」という、覚えることの少ない分かりやすい世界です。

同じ感覚でCodexのフォルダ構成を見ると、途中で手が止まります。.codex 配下にいるのはサブエージェントだけで、Skillsが見当たらないのです。CodexのSkillsの置き場所は .agents/skills——製品名とは別の名前のフォルダにあります。当社で最初にこの構成を確認したときも、率直に「なぜ自分の名前のフォルダに揃えないのか」という違和感がありました。

Claude Codeは.claude配下にagents・skills・commandsを集約し、Codexはプロジェクト直下のAGENTS.mdと.agents/skills、.codex/agentsに分かれているディレクトリ構成の比較
Claude Codeの「製品専用ディレクトリへ集約」と、Codexの「.agentsと.codexへ分割」の対比(筆者環境での構成例)

しかし調べていくと、これは置き忘れでも設計の乱れでもなく、明確な意図を持った判断でした。背景には、ツールの垣根を越えて広がりつつあるオープン仕様があります。

答えはAgent Skillsというオープン仕様

結論から言うと、CodexのSkillsはCodex固有の形式ではありません。ベースになっているのは、Anthropicが2025年12月に公開した「Agent Skills」というオープンな共通仕様です。スキルの実体は、SKILL.mdという自然言語の手順書を中心に、必要に応じてスクリプトやテンプレートを同梱できる1つのディレクトリ。特定の製品に依存しない、いわば「AIエージェント向けマニュアルの標準フォーマット」です。

この仕様は公開後まもなくOpenAI(ChatGPT・Codex)やMicrosoft(VS Code)が対応し、2026年春時点では30以上のツールが同じ形式のスキルを読めるようになっています。そして仕様側の慣習として、チームで共有するスキルはリポジトリの `.agents/skills/` に置くことになっています。Codexはこの慣習にそのまま従っているだけ——だから .codex ではなく .agents なのです。Codex専用の場所に置かないことで、同じスキルをAgent Skillsに対応する他のツールからもそのまま再利用できます。

発案したのはAnthropic、採用したのはOpenAI

Agent Skillsを発案したのは、Claude Codeを開発するAnthropicです。それを競合であるOpenAIのCodexが採用している——この構図自体が、スキルという仕組みが1社の機能ではなく業界の共通言語になりつつあることを示しています。

.agentsと.codexの役割分担 — 能力と設定を分ける

この前提に立つと、Codexのフォルダ構成は一貫した切り分けとして読めます。.agents に置かれるのは「エージェントが使う、再利用可能な能力」。.codex に置かれるのは「Codexというツール固有の実行設定」。整理すると次のようになります。

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ディレクトリ役割性質
.agentsエージェントが使う再利用可能な能力(Skills)ツールを問わず持ち運べる共有資産
.codexCodex固有の実行設定(サブエージェントなど)Codexで使うことを前提にした個別設定

同じ「エージェント関連のファイル」でも、どのツールでも通用する資産なのか、このツール専用の設定なのかで住所が分かれている——そう捉えると、最初の違和感はむしろ設計の明快さに変わります。ツール横断の共通形式という意味では、作業フォルダのルールを書くAGENTS.mdも同じ発想に立つ仕組みです(具体的な書き方はAGENTS.mdの書き方で解説しています)。

設計思想の違い — 製品単位でまとめるか、資産を分離するか

では、.claude 配下にすべてを置くClaude Codeの設計は古いのかというと、そうではありません。「このツールに関するものはこのフォルダを見ればよい」という分かりやすさは導入初期の迷いを確実に減らしますし、そもそもAgent Skillsの発案元はAnthropic自身です。製品単位でまとめる構成には、それはそれのはっきりした合理性があります(Claude Code側でのスキルの作り方はClaude CodeのSkillsの作り方で解説しています)。

一方Codexは、ポータブルなAgent資産(.agents)とCodex固有設定(.codex)を分離する構成を選びました。フォルダがひとつにまとまる分かりやすさよりも、書いたスキルを他のツールでも使い回せることを優先した形です。どちらが正しいという話ではなく、「製品単位でまとめる」か「資産の持ち運びやすさで分ける」かという整理の哲学の違い——両方を知っておくと、2つのツールのフォルダ構成がすっと頭に入ります。

実務への示唆 — スキルは特定ツールに縛られない会社の資産になる

ここまでの話は、フォルダ構成の豆知識にとどまりません。企業のAI活用にとって重要なのは、業務手順をスキルとして書き溜めたものが、特定ツールにロックインされない「会社のナレッジ資産」になりうるという点です。

AIツールの導入判断には「いま選んだツールが2年後も最適とは限らない。乗り換えたら、それまでの蓄積が無駄になるのではないか」という迷いがつきものでした。Agent Skillsのようなオープン仕様の広がりは、この迷いに対する業界としての答えです。手順書という資産をツールから切り離し、持ち運べるようにする——業界はいま、その方向に向かっています。だからこそ、スキルを書くときも「持ち運べる資産」になるよう意識しておくと価値が長持ちします。

  • 手順そのものを自然言語で書く — 特定ツールの操作ではなく「何を・どの順で・どう判断するか」を中心に書くと、ツールが変わっても通用します
  • チーム共有はリポジトリの `.agents/skills/` に置く — 仕様側の慣習に合わせておけば、対応ツールが増えるほど再利用の選択肢が広がります
  • ルールと手順を分ける — どの仕事でも毎回守る原則はAGENTS.mdに、繰り返し業務の手順はスキルに。この分担は資産の棚卸しもしやすくします

当社自身、40以上の業務をAIエージェントに任せる中で、繰り返し業務の手順を1つずつスキルに落としてきました。その経験から言えるのは、スキル化の本質はツールの操作ではなく業務の言語化だということです。どの業務からスキルにするか、手順をどの粒度で書くか、書いたスキルをどう育てるか——当社のCodex研修・導入伴走支援では、貴社の実業務を題材に、スキル化する業務の選定から手順書の初版づくり、運用の定着までを一体でご支援しています。

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