結論 — Codexの精度を決めるのはモデルではなく下準備

先に結論を書きます。Codexの成果物の質は、依頼を打ち込む前の下準備で8割が決まります。ここでいう下準備とは、業務の目的・関係者・これまでの経緯・自分の好みといった背景情報、つまりコンテキストを、Codexが読める場所に置いておくことです。

Codexは、プロジェクトとして選んだフォルダの中身を読んで作業します。裏を返せば、フォルダに何もなければ、一般に公開されている知識だけを頼りに答えるしかありません。空のフォルダで「来月の研修資料を作って」と頼めば、どこにでもある研修資料の雛形が返ってきます。これは精度が低いのではなく、あなたの会社の研修をCodexが知らないだけです。

当社は、AIはすでに大半の分野で人間より賢い、という前提に立っています。だからこそ、期待した成果物が返ってこないとき、原因をモデルの側に探しません。Codexが知らないことを、自分だけが知ったまま頼んでいないか——確認する場所はここだけです。

原則は1つ — 自分が知っていることとCodexが知っていることの差をゼロに近づける

当社がCodexを使うときに守っている原則は1つだけです。自分は知っていて、Codexが知らないことをなくす努力を続ける。新しく入ったスタッフに、案件の経緯も顧客の事情も伝えないまま「提案書をお願いします」と頼めば、どれだけ優秀な人でも的外れなものが出てきます。Codexも同じです。

しかも相手は同僚というより、自分の分身に近い存在です。分身との間に情報の差があれば、思ったとおりに動くはずがありません。

この原則で見ると、Codexが期待どおりに動かない場面は「情報の欠落」か「情報のズレ」のどちらかに整理できます。典型的な症状と、補充すべきものを表にまとめます。

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Codexの返答起きていること補充するもの
一般論しか返ってこない業務固有の材料が渡っていない(欠落)過去の成果物・議事録・顧客とのやり取り
形式や言い回しが毎回違う自分の流儀・ルールが伝わっていない(欠落)見本にしたいファイル、書式や禁止事項のルール
前提を取り違えたまま進む古い資料や別案件の資料が混ざっている(ズレ)最新版だけを残す、案件ごとにフォルダを分ける
途中で指示が抜け落ちる読ませる量が多すぎて要点が埋もれている(ズレ)要約と索引(置き方の設計は別記事で解説)

難しい設定もプログラミングも要りません。必要なのは、依頼のたびに「渡し忘れている情報はないか」と一度立ち止まる習慣と、その情報が自然に貯まっていく仕組みです。次の節では、貯め方=集め方を3つに整理します。

コンテキストの集め方は3つ — 常時収集・自分で整理・AIに整理させる

「コンテキストを集めましょう」と言われても、何から手をつければいいか分からない方がほとんどです。当社が講座・研修で伝えている集め方は、次の3つに集約されます

集め方1|常時収集する — 業務で自然に発生するものを捨てない

ビジネスをしていれば、コンテキストは毎日発生しています。SlackやChatworkのやり取り、オンライン会議の録画と文字起こし、メール、顧客との会話のメモ、過去の提案書や見積書。問題は量ではなく、それらを取っておく癖があるかどうかです。

当社では、打ち合わせや対面の会話も、相手の了承を得たうえで可能な限り録音し、文字起こしをフォルダに入れています。店舗や対人サービスの業務なら、お客様との会話メモがそのまま最も価値の高いコンテキストになります。あとから「この方は何に困っていたか」を辿れるので、次の提案の質が変わります。迷ったら残す、が基本の構えです。

録音・記録の2つの線引き

会議や会話を残すときは、録音・記録することを相手に伝えて了承を得ること、そして氏名・連絡先などの個人情報はメモから除くことの2点を守ってください。コンテキストとして必要なのは「どんな状況で、何に困り、何を決めたか」であって、個人を特定する情報ではありません。社内に情報管理のルールがある場合はそちらを優先します。

集め方2|自分で整理する — 全部読ませればいいわけではない

集めた生データを、そのまますべてCodexに読ませればよいわけではありません。Codexが一度に扱える情報量には上限があり、生データを丸ごと渡すと、肝心の部分が埋もれます。目的別にフォルダを分け、要約や目次を置いておくだけで、Codexは「どこを見ればよいか」で迷わなくなります。

フォルダを「生データ」と「整理済み」に分ける具体的な設計、索引の作らせ方、圧縮やリセットの操作はCodexのコンテキストとは?上限の確認・圧縮・リセットと「詰まらせない」フォルダ設計で詳しく解説しています。本記事では、集めたあとに整理の工程が要る、という事実だけ押さえてください。

集め方3|AIに整理させる — 集めるのは人間、整理はAI

3つの中で最も現実的で、当社が最も多く使っているのがこの方法です。「このフォルダの文字起こしを要約して、テーマごとにファイルを分けて」「先月の議事録から決定事項と宿題だけ抜き出して一覧にして」と頼めば、整理そのものをCodexに任せられます。人間は取っておくことに集中し、整理はAIに渡す。この分業が回りはじめると、コンテキストは加速度的に貯まります。

整理の途中で見つかった「毎回守ってほしいルール」は、資料とは別にAGENTS.mdへ書き出しておくと、以降の依頼で自動的に読み込まれます。逆に、Codexのメモリ機能が覚えていてくれるだろうと期待して整理を省くのはおすすめしません。

Codexのメモリ機能で解説しているとおり、当社は記憶ではなくファイルで担保する運用を選んでいます。

集め続けると何が起きるか — 1ヶ月目・2ヶ月目・3ヶ月目の変化

コンテキストを集め続けると、Codexとの関係は段階的に変わります。当社の講座・研修で見てきた傾向を、時期ごとに整理します。

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時期依頼のしかた起きていること
1ヶ月目依頼のたびに材料をフォルダに入れ、背景を説明してから頼むフォルダはまだ薄い。成果物は返ってくるが、毎回の準備が手間に感じられる。ここで「面倒だ」と離れる人が多い
2ヶ月目「前回と同じ形式で」「あの案件の続きで」が通じはじめる背景情報と自分のルールが貯まり、Codexが過去の資料を自分から参照するようになる。指示が目に見えて短くなる
3ヶ月目「いつものやつをお願い」で、期待どおりのものが返ってくる集めた分だけ、Codexが自分の考え方と仕事の進め方を知っている状態になる。早い人で1〜2ヶ月、多くの人はこの時期に変化を実感する

3ヶ月目に起きているのは魔法ではありません。情報の欠落を補充し続けた分だけ、Codexがあなたの考え方と仕事の進め方を知っている——それだけのことです。だからこそ当社は、最初の1ヶ月でCodexを評価しないでほしいとお伝えしています。

2〜3回触って「思ったほどではない」と離れてしまうのは、背景を何も渡していない相手を評価しているのと同じで、もったいない判断です。3ヶ月分の背景を渡した相手として見たとき、Codexの評価は別物になります。

最初の一歩 — フォルダを1つ作り、1つの業務の資料を集める

ここまで読んで「まず何をすればいいか」を一言でいえば、フォルダを1つ作ることです。難しい設定は後回しでかまいません。

  1. 1フォルダを1つ作る — パソコンの分かりやすい場所に、いま関わっている業務の名前でフォルダを作ります。この時点で中身は空で問題ありません
  2. 2その業務に関係する資料を集める — 議事録、過去の提案書、送ったメールの下書き、参考にした他社事例。形式はバラバラのままで構いません。清書も不要です。まずは集めることだけに集中します
  3. 3そのフォルダをCodexのプロジェクトとして選び、依頼する — 依頼文は「ゴール・コンテキスト・制約・完了条件」を揃えて書きます。依頼文の型はCodexの使い方で解説しています
  4. 4返ってきた成果物を見て、足りなかった情報を足す — 期待とズレていた箇所は、Codexが知らなかったことです。その資料をフォルダに追加し、もう一度頼みます。この往復が、そのままコンテキストの蓄積になります

業務を1つに絞る理由

最初から全業務の資料を集めようとすると、フォルダが雑多になり、Codexも人間も迷います。1つの業務で「指示が短くなった」を体験するほうが、次の業務へ広げる動機になります。範囲を広げるのは、その業務で成果物が期待どおりに返るようになってからで十分です。

こうして集めたコンテキストは、集めた本人と会社にしか作れない資産です。AIのモデルが賢くなるほど、同じモデルを使う相手との差は、渡している情報の差だけになります。当社のCodex研修・導入伴走支援では、この集め方の設計——どの業務の何を、どこに、どう貯めるか——を、ツールの操作方法とあわせてご支援しています。

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