結論 — Codexのプロンプトは「良い答え」ではなく「仕事の終わり」を書く

ChatGPTのプロンプトの目的は、良い答えを引き出すことです。一方、Codexのプロンプトの目的は、仕事を任せて、確認済みの成果物を受け取ることです。ゴール・背景・制約はどちらにも書きます。Codexで新たに必要になるのは、「何が確認できたら終わりか」を依頼の時点で書く完了条件(Done when)の1行です。

自社の40以上の業務をAIエージェントに任せてきた株式会社AI Orchestraの経験では、うまくいく依頼文とそうでない依頼文の差は、ほぼこの1行に集約されます

なお、材料の渡し方・依頼文・レビューという「頼み方3つの型」と、AGENTS.mdやSkillsで業務基盤に育てる「5つの仕組み」の全体像はCodexの使い方で解説しています。本記事はそのうち、依頼文(プロンプト)そのものの書き方に絞って掘り下げます。

ChatGPTとCodexでプロンプトの役割が違う理由 — 会話が単位か、仕事が単位か

ChatGPTは対話型AIです。役割を与え、条件を並べ、出力形式を指定して答えを引き出す。返ってきた答えを読んで、足りなければ聞き直す。1往復の会話が単位なので、依頼が多少曖昧でも、やり取りを重ねるうちに欲しい答えに近づけます。

Codexは対話型AIではなく、AIエージェントです。作業フォルダの中の資料を読み、実際にファイルを作り、成果物として持ってきます。単位は会話ではなく仕事です。ここで「終わりの定義」がない依頼を受け取ると、Codexは足りない前提を推測で埋め、それらしい成果物を置いて止まります。ChatGPTなら聞き直せばよかった曖昧さが、Codexでは「一般論の成果物」という形で返ってくるのです。

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観点ChatGPTのプロンプトCodexのプロンプト
依頼の単位1往復の会話1件の仕事
依頼文の目的良い答えを引き出す確認済みの成果物を受け取る
材料の渡し方チャットに貼り付ける作業フォルダに置き、ファイル名で指す
曖昧さの扱い答えを見て聞き直せる推測で埋められ、それらしい成果物になる
新たに必要な要素完了条件(Done when)

ChatGPTが上手な人ほど、Codexでつまずきやすい

ChatGPTを使い込んだ方は、良い答えを引き出す技術がすでに身についています。ただしそれは会話の質を上げる技術であって、仕事の完了を定義する技術ではありません。曖昧な依頼でもそれなりの答えが返ってきた成功体験が、Codexではそのまま「終わりを書かない依頼」につながります。もったいないのは、Codexの性能ではなく、依頼文に1行足りていないことです。

違いの核心は「完了条件(Done when)」— 依頼の時点で終わりを決める

完了条件とは、「何が確認できたら、この仕事は終わりか」を依頼の時点で書いたものです。「本文の数字がすべて元資料と一致していること」「A4・1枚に収まっていること」のように、Codex自身が判定できる形で書きます。

完了条件を書くと、Codexの動きが変わります。成果物を作ったあと、自分でその条件を確かめにいき、満たしていなければ直してから持ってくるようになるからです。書いていなければ「作りました」で終わります。新しく入ったスタッフに仕事を頼むときと同じで、「どうなったらOKか」を伝えていない仕事は、受け取ってから手戻りになります。

完了条件は、追加の手間ではありません。成果物を受け取ったあとに自分がやるはずだった確認を、先にCodexへ渡しているだけです。書く場所が「あとで自分の頭の中」から「先に依頼文の最後の一行」へ移るだけで、確認そのものが増えるわけではありません。

OpenAIが公式に示す4点セット — Goal・Context・Constraints・Done when

Codexへの依頼文の型として、OpenAIはGoal(ゴール)・Context(コンテキスト)・Constraints(制約)・Done when(完了条件)の4点セットを公式に示しています。呪文のようなテクニックは要りません。この4点を、普通の日本語で書けば十分です。

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要素書く内容ChatGPTのプロンプトとの関係
Goal(ゴール)何を、どの形式で完成させるか(例:A4・1枚のWord形式の営業報告書)ChatGPTでも書いていた
Context(コンテキスト)どのファイル・情報を根拠にするか(例:フォルダ内の商談メモと売上集計)ChatGPTでは貼り付けていた。Codexでは作業フォルダに置き、ファイル名で指す
Constraints(制約)してはいけないこと・守る様式(例:資料にない数字を足さない、専門用語を使わない)ChatGPTでも書いていた
Done when(完了条件)何が確認できたら完了か(例:本文の数字がすべて売上集計と一致している)Codexで初めて必要になる

コンテキストは、チャットに長文を貼り付けるのではなく、作業フォルダに置いてファイル名で指すのがCodex流です。生データと整理済みデータを分けて索引を作らせる置き方はCodexのコンテキストで解説しています。

また、毎回同じ制約(言語・トーン・禁止事項)を依頼文に書いていると気づいたら、その行は依頼文ではなくAGENTS.mdに移します。依頼文には、その仕事に固有のゴール・材料・制約・完了条件だけが残るのが理想です。

依頼文の例 — 1行の依頼と4点セットの依頼で、成果物はどう変わるか

先月分の営業報告書をCodexに作らせる場面で比べます。まず、ChatGPTの延長線上でよく見かける依頼文です。

ビフォー — ChatGPT流の1行の依頼
先月の営業報告書を作ってください。

これでも、体裁の整った報告書は出てきます。しかし根拠となる資料を指していないので、数字は仮置きか一般論、構成はどこかで見たような雛形になり、自社の報告書の様式は反映されません。「AIはまだ仕事には使えない」という結論に至る典型的な流れです。

アフター — 4点セットの依頼文
ゴール:2026年7月分の営業報告書を、A4・1枚のWord形式で作ってください。

コンテキスト:このフォルダにある「7月_商談メモ.md」「7月_売上集計.xlsx」「6月_営業報告書.docx」の3つだけを根拠にしてください。構成と見出しは6月の報告書に揃えます。

制約:3つのファイルに書いていない数字や見込みを足さないこと。専門用語を使わず、数字は箇条書きで示すこと。

完了条件:本文中のすべての数字が「7月_売上集計.xlsx」と一致していること。A4・1枚に収まっていること。合わない箇所があれば直してから報告してください。

同じ「営業報告書を作って」という依頼でも、成果物は別物になります。構成が自社の型に揃い、数字は集計表と照合されたうえで持ってこられ、1枚に収まらなければCodexが自分で削ってから報告します。「数字が2か所ずれていたので直しました」という報告が先に来る状態です。この差を生んでいるのは、才能でも特別なテクニックでもなく、依頼文の最後の一行です。

業務別の依頼文の実例をさらに見たい方は、非エンジニアの日常業務10選を頼み方の一言つきで整理したCodexの業務活用をご覧ください。

完了条件の書き方3パターン — 数字の一致・形式の成立・自分の最終確認

「完了条件を書けと言われても、何を書けばいいのか」という方のために、当社が研修で使っている3つのパターンを挙げます。上から順に書きやすく、3つ目が最も本質的です

  1. 1数字・事実の一致 — 「本文中の数字がすべて元資料と一致していること」「登場する固有名詞が議事録と一致していること」。報告書・議事録の整理・要約なら、まずこれを書きます。いちばん書きやすく、効果もいちばん大きい完了条件です
  2. 2形式の成立 — 「A4・1枚に収まっていること」「すべての表に見出し行があること」「HTMLの資料ならブラウザで最後まで表示でき、文字がはみ出していないこと」。見た目や体裁の合格ラインを、確認できる形で書きます
  3. 3自分が最後にやる確認を、先に書く — 成果物を受け取ったあと、自分は何をチェックするつもりか。それをそのまま完了条件として先に書いてしまいます。すると、その確認をCodexが先に済ませてから持ってくるので、人間の仕事は本当に最終確認だけになります

完了条件は「確認できる形」で書く

「いい感じに」「わかりやすく」「丁寧に」は完了条件になりません。Codexが自分で判定できない基準だからです。一致している・収まっている・開ける・存在するのように、確かめれば白黒がつく形に落としてください。迷ったら「自分ならどこを見て合格と判断するか」を思い浮かべ、その見どころをそのまま書けば十分です。

ひとつ補足すると、完了条件を満たしたとCodexが報告しても、最終確認は必ず人間が行います。完了条件は人間の確認を省くためのものではなく、確認の前に手戻りの大半をCodex側で潰しておくためのものです。受け取ったあとのレビューと修正依頼の進め方はCodexの使い方の「型3」を参照してください。

完了条件が書けないなら、合格基準がまだ決まっていない

ここまで読んで「それでも完了条件が書けない仕事がある」と感じたなら、それはAIの問題ではありません。自分の中で「何が合格か」がまだ決まっていないということです。ChatGPTでは、合格基準が曖昧なままでも何となく答えが返ってきました。Codexにはそれが通じません。逆に言えば、「どうなったら完了か」を言葉にできる人は、プログラミングの知識がなくても、今日からCodexに仕事を任せられます。

この「合格基準を言葉にする」作業は、個人のプロンプト技術にとどまりません。会社の業務ひとつひとつについて「どうなったら終わりか」を書き出す作業は、業務の棚卸しそのものです。チームで完了条件の書き方を揃えると、誰が頼んでも同じ品質の成果物が返ってくるようになり、その完了条件はそのままAGENTS.mdやSkillsの土台になります。

当社のCodex研修・導入伴走支援では、貴社の実業務を題材に、4点セットでの依頼文づくりから完了条件の言語化、そして仕組み化までを一気通貫でご支援しています。ツールの操作より先に「何が合格か」を決める——その進め方から、一緒に取り組みます。

Codexを組織に定着させたい企業様へ。AI Orchestraの法人研修・導入支援をご覧ください。