「組織の指示」とは — 場所と仕様を押さえる
組織の指示(organization instructions)は、TeamプランやEnterpriseプランの管理画面から設定する、組織全体へ効くシステムプロンプトです。場所は組織設定 > 組織とアクセスで、チーム名の下に入力欄があります。設定できるのはAdmin・Owner・Primary Ownerの管理者役割だけで、公式ヘルプでもUserロールは設定できないと明記されています。

上の画面は、2026年8月26日に当社が2席のTeamプランで確認した実画面です。入力欄には0/3000のカウンターがあり、最大3,000文字まで書けます。プレースホルダーに「デフォルトでメートル法を使用してください」という例が示されているとおり、想定されているのは具体的で短い指示の集合です。
ここに書いた内容は、組織の全メンバーの、すべての会話に適用されます。画面の説明文にも「組織全体のすべての会話に適用され、ユーザーの個人設定よりも優先されます」とあり、メンバー側が自分の設定でオフにする手段はありません。
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| 項目 | 仕様(2026年8月時点) |
|---|---|
| 設定できる人 | Admin・Owner・Primary Owner(Userロールは不可) |
| 文字数上限 | 3,000文字 |
| 適用範囲 | 組織の全メンバーの全会話 |
| 優先順位 | 個人のカスタム指示・プロジェクトの指示より優先 |
| 反映タイミング | 保存から最大1時間かかる場合がある |
仕様の詳細は公式ヘルプの組織の指示の解説にまとまっています。特に見落としやすいのが反映まで最大1時間かかる点で、保存した直後の会話で効いていなくても設定ミスとは限りません。時間を置いてから確認してください。
安全ガイドラインの上書きはできません
公式ヘルプは、Claudeの安全ガイドラインに反する指示は書いても従われないと明記しています。組織の指示は「表現・フォーマット・業務ルールの統一」のための仕組みであり、モデルの制限を外す仕組みではありません。この前提を押さえておくと、書くべき内容の範囲がはっきりします。
個人のカスタム指示・プロジェクトの指示との階層関係
claude.aiでClaudeに与える指示には3つの層があります。組織の指示・個人のカスタム指示・プロジェクトの指示です。設定する人と適用範囲がそれぞれ違い、内容が衝突したときは組織の指示が最優先になります。
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| 層 | 設定する人 | 適用範囲 | 矛盾したとき |
|---|---|---|---|
| 組織の指示 | 管理者(Admin以上) | 組織の全メンバーの全会話 | 最優先 |
| 個人のカスタム指示 | 各メンバー本人 | その人の全会話 | 組織の指示に劣後 |
| プロジェクトの指示 | プロジェクトの作成者 | そのプロジェクト内の会話 | 組織の指示に劣後 |
この優先関係は、管理者にとって「全社ルールが個人設定で外されない」という保証です。裏を返すと、組織の指示に書いた内容はメンバーの側で調整できません。全員に常に当てはまらないことを書くと、現場に逃げ場がなくなります。この非対称性が、後述する設計原則の出発点です。
なお、Claude Code(CLI)のCLAUDE.mdやsettings.jsonは、この3層とは別系統です。CLAUDE.mdはリポジトリやホームディレクトリに置くファイルで、claude.aiの管理画面からは制御できません。組織の指示を書くときに「CLIの統制もここでできるのでは」と期待すると設計を誤ります。
書くべきこと — 4つの設計原則
仕様を踏まえると、書くべき内容はおのずと絞られます。公式ヘルプの推奨と、Claude Codeの企業導入で先行して蓄積されたガードレール設計の知見を管理画面の文脈に翻訳して、4つの原則に整理します。
原則① 全メンバーに常に当てはまることだけを書く
組織の指示は全員の全会話へ無条件に入ります。エンジニアだけ・営業だけに当てはまるルールを書くと、他の部署の会話ではノイズになります。公式も「組織全体に一貫して適用される基準に限定する」ことを推奨しています。部署や用途ごとのルールは、個人のカスタム指示やプロジェクトの指示へ切り分けてください。
原則② 検証できる具体的な言葉で書く
公式ヘルプの推奨は「簡潔かつ具体的に」です。「丁寧に対応して」ではなく「社外向けの文面は敬体で書き、結論を先に置く」のように、守れたかどうかを後から判定できる書き方にします。曖昧な精神論は、書いても挙動がほとんど変わらず、文字数だけを消費します。
原則③ 禁止だけでなく、代わりの行き先をセットで書く
Claude Codeの企業導入で確立した定石は、ガードレールを「禁止の明文化」と「正しい誘導先」のセットで書くことです。「顧客名を書かない」で止めず「仮名に置き換える」まで、「法務の判断はしない」で止めず「顧問弁護士への確認を促す」まで書くと、禁止がメンバーの作業を止めません。
公式が挙げるユースケースにも問い合わせのルーティング(例: 人事ポリシーの質問は人事の窓口へ誘導する)やPII保護(顧客名・口座番号などを応答や成果物に含めない)が並んでおり、同じ発想です。禁止と誘導のセットは、非エンジニアにもそのまま通じる書き方でもあります。
原則④ 短く保つ — 長さはそのまま会話のコストになる
組織の指示は全メンバーの全メッセージに毎回含まれます。公式ヘルプも、長いほど会話の処理効率が下がると注意しています。上限は3,000文字ですが、使い切ることを目標にせず、800〜1,500字程度の「全員に効く最小セット」を維持するのがおすすめです。矛盾する指示の混入も、短いほうが防ぎやすくなります。
「ポリシーの周知を一元化し、非エンジニアも守れる形で配る」という発想自体は、Claude Codeの組織導入で先行事例が報告されています。メルカリのエンジニアによる組織設定の発表やクラウドネイティブ社の企業導入ベストプラクティスはCLI側の統制が主戦場ですが、その考え方は管理画面にもそのまま持ち込めます。
書くべきでないこと — 置き場所が別にあるもの
原則の裏返しとして、組織の指示に書くとかえって害になるものを挙げます。共通するのは、どれも「もっと適切な置き場所が別にある」ことです。
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| 書きたくなる内容 | 正しい置き場所 |
|---|---|
| 個人の好み(口調・絵文字・回答の長さなど) | 各メンバーの個人のカスタム指示 |
| 特定の案件・プロジェクト固有の背景知識 | プロジェクトの指示・プロジェクトナレッジ |
| Claude Code CLIの権限・ツール制限 | settings.json・managed settings(CLI側の仕組み) |
| 社内マニュアル・規程集の全文 | 社内ドキュメント(必要な部分だけプロジェクトへ添付) |
特にやりがちなのが社内規程の貼り付けです。仮に3,000文字へ収まっても、全会話へ毎回規程全文が入る状態になり、本来効かせたい数行の指示が埋もれます。規程は要点だけを指示に落とし、全文は参照先として社内ドキュメントに置いてください。組織全体で共有したい知識は、組織共有プロジェクトに置く設計が向いています。
また、Claude Code CLIで「どのコマンドを許可するか」「どのファイルに触らせないか」は組織の指示では制御できません。そこはsettings.jsonやmanaged settingsの領分です。CLI側の統制はClaude Codeのpermissions設定の解説で詳しく整理しています。
当社の運用を前提にした実文例(全文)
ここからが本題です。当社(AI Orchestra)の運用を前提に作った、組織の指示の実文例を全文掲載します。研修事業として社外向けの文面・提案資料・記事案を日常的に作り、受講企業の情報を扱う——という当社の実情に合わせた内容で、分量は約800字。社名と窓口を自社のものに差し替えれば、そのまま初版として使えます。
【言語・表記】
・応答は日本語で書く。コード・コマンド・ファイルパス・引用する英文はそのままでよい。
・社名・サービス名は「AI Orchestra」「AI Crew」と英字で表記する。カタカナ表記(AIオーケストラ など)は使わない。
・会社を指す一人称は「当社」とする。
【機密情報・個人情報の扱い】
・顧客名・受講企業名・担当者の個人名を、メール文面・提案資料・記事案などの成果物に書かない。例示が必要なときは「A社」「ご担当者様」などの仮名に置き換える。
・APIキー・パスワード・アクセストークンなどの認証情報を応答に書かない。会話に貼り付けられた場合は以後の応答へ転記せず、無効化と再発行を提案する。
・受講者名簿や問い合わせメールに含まれる個人情報は、依頼された処理だけに使い、別の成果物へ流用しない。
・チャットや成果物の共有リンクを社外へ送る前に、上記の情報が含まれていないか確認を促す。
【社内の問い合わせ先】
・契約・請求・支払いの実務に関する質問には、一般的な情報の提示にとどめ、最終確認は経理担当へ回すよう案内する。
・契約書のレビューなど法的な判断が必要な質問には、参考情報であることを明示したうえで論点の整理を手伝い、確定判断は顧問弁護士への確認を促す。
・Claudeの利用ルールや設定に関する質問には、組織の管理者へ問い合わせるよう案内する。
【成果物の基本フォーマット】
・社外向けの文章は、結論 → 理由 → 次のアクションの順で組み立てる。
・日付は「2026年8月26日」の形式で書き、西暦を省略しない。
・金額には税込か税抜かを必ず明記する。
・事実と推測を区別し、確認できていない情報は「未確認」と明記する。
【判断に迷ったとき】
・この指示のどれに当たるか判断できない場合は、迷っていることを明示して確認を求める。
・この指示と個別の依頼内容が矛盾する場合は、黙ってどちらかを優先せず、矛盾を指摘して依頼者の判断を仰ぐ。以下、各セクションがなぜあるのかを順に解説します。自社用に組み替えるときは、行を真似るのではなく、この「置いた理由」のほうを持ち帰ってください。
「言語・表記」— 全員・全会話に常に当てはまる筆頭
表記ゆれは、全社でClaudeを使い始めた直後に最初に目につく問題です。当社では社名の英字表記(AI Orchestra・AI Crew)を全媒体共通のルールにしており、音声入力でカタカナが混ざっても成果物は英字にそろえます。こうした例外なく当てはまる表記ルールは、組織の指示のいちばんの適地です。
「機密情報・個人情報の扱い」— 禁止と代替行動のセット
実文例の中心です。「書かない」で止めず「仮名に置き換える」「再発行を提案する」まで書いてあるのが原則③の形で、禁止がそのまま作業の停止にならないようにしています。研修事業では受講企業名や受講者名簿を扱う場面が多く、成果物への転記を止める一線を組織側で引いておく意図です。
これは公式ユースケースのPII保護を、自社の業務に合わせて具体化したものです。「顧客名・口座番号などを含めない」という一般形のままではメンバーが判断に迷うため、当社で実際に発生する成果物の種類(メール文面・提案資料・記事案)を名指しで列挙しています。
「社内の問い合わせ先」— 少人数の組織でも書く価値がある
問い合わせのルーティングは公式ユースケースの筆頭格です。大企業向けの機能に見えますが、2席の当社でも「経理のことはClaudeの回答で確定させない」「法務は顧問弁護士へ」という線引きとして機能します。Claudeがもっともらしい回答で実務を確定させてしまう事故を、組織全体で防ぐ狙いです。
「成果物の基本フォーマット」— 例外のない4点だけに絞る
フォーマット指定は際限なく増やしたくなる項目ですが、増やすほど個別の依頼と衝突します。当社の文例では、社外文書の構成・日付・金額表記・事実と推測の区別という、どの成果物にも例外なく当てはまる4点だけに絞りました。文書の種類ごとの細かい型は、プロジェクトの指示に置く設計です。
「判断に迷ったとき」— 最優先ルールに逃げ道を作る
組織の指示は個人設定より優先されるため、現場の依頼と矛盾したときの振る舞いを、指示の側にあらかじめ書いておくと安全です。「矛盾を指摘して依頼者の判断を仰ぐ」の一行があるだけで、全社ルールが現場の作業を黙って壊す事態を避けられます。
自社用に差し替えるときのチェックポイント
この文例を流用する場合は、①社名と表記ルール ②成果物の種類(自社で実際に作るもの)③問い合わせ窓口の呼び名(経理担当・情シスなど)④日付・金額など業界慣行のあるフォーマット、の4点を差し替えてください。また、組織設定の画面は管理者にしか表示されないため、設定した内容は社内ドキュメントにも掲示して周知してください。周知がないと「Claudeの挙動が変わった理由」が現場から見えなくなります。
導入してからの運用 — 確認・変更管理・効果測定
設定したら、まず反映に最大1時間かかる前提で動作を確認します。実文例なら「顧客名入りのメール文面を書かせて仮名化されるか見る」など、書いた指示が守られるかを1項目ずつ試すのが確実です。保存直後のテスト会話で変化がなくても、慌てて書き直さないでください。
当社が確認した画面には、入力欄と文字数カウンターだけで変更履歴を確認する機能は見当たりませんでした。原本は社内ドキュメントで管理し、いつ・何を・なぜ変えたかを記録してから貼り付ける運用にすると、挙動が変わったときに原因を追えます。枠は1つだけで、変更は常に上書きになります。
指示を整えたあと、そもそもClaudeが組織で使われているか・定着しているかは管理画面のアナリティクスで確認できます。見方はアナリティクスの解説記事へ。組織設定メニュー全体で管理者が何をできるかは組織設定の解説記事にまとめています。
これからTeamプランを契約する場合は、Pro→Team移行の解説で移行時の注意点を、法人契約の解説でプランの選び方を先に確認してください。組織の指示は契約初日に1枚入れておくだけで立ち上がりの品質がそろうため、導入タスクの初日に含める価値があります。
Claude Codeを組織に定着させたい企業様へ。AI Orchestraの法人研修・導入支援をご覧ください。
組織の指示づくりから定着まで — 当社の導入支援
当社のClaude Code研修・導入伴走支援では、Teamプランの初期設計——組織の指示の起草、共有プロジェクトの構成、利用ルールづくり——から、部署別の研修、定着の計測までを一体で支援しています。組織の指示は書いて終わりではなく、運用の中で磨かれていく文書です。自社の業務に合わせた最初の1枚を作りたい場合は、無料相談をご利用ください。






